経営者としての思いを語っていただく「起業家ネットワークセミナー」。
2017年8月4日(金)に第2回を開催しました。
ゲスト:岡崎酒造株式会社 杜氏 岡崎 美都里氏
ファシリテーター:一般財団法人浅間リサーチエクステンションセンター(AREC) 専務理事 岡田基幸
開催日時:2017年8月4日(金)14:00~16:00
開催場所:松尾町フードサロン
■岡崎酒造株式会社 杜氏 岡崎 美都里氏
上田市柳町の創業350年を超える老舗蔵元・岡崎酒造の12代目に生まれ、
それまで外部の杜氏を招いていた岡崎家で、初めて家族が杜氏となった(オーナー杜氏)。
東京農業大学で醸造学を学び、大手酒販売会社に就職。家業を継ぐために帰郷し、
ベテラン杜氏の元で酒造りを学んだのち、経営と醸造を一手に担う。
菅平水系の水、県産の米を使い、手作業で醸す酒が身上。「大吟醸 亀齢(きれい)」が、
2015年に関東信越国税局酒類鑑評会にて最優秀賞を獲得するなど、全国から注目を集めている。
イベント前半はゲストである岡崎さんとファシリテーターの岡田による対談形式で
トークを展開しました。
帰郷時は経営者として働くつもりだったのが、30歳でオーナー杜氏に
トークのはじまりは、岡崎さんの経歴についてから。
岡崎さんがどのような流れで家業である「岡崎酒造」を継ぐことになったのか、
その経緯を伺いました。
岡崎さんが後継ぎになると決めたのは小学生時代。大学も後継ぎのことを視野に入れて、
醸造を専攻に学ばれました。
帰郷をしたのは26歳の時。
その際は経営者として働くつもりだったのが、当時の杜氏※が引退をしたいという思いを
抱えていたのを知り、自ら蔵にも入る「オーナー杜氏」になることを決意されたそうです。
先代の杜氏から4年間、機械の操作や手順、一つ一つ蔵の仕事をしっかりと教わってから
引き継がれました。
※杜氏……酒造りの職人の長。
ご主人と共に働くことによってメリットが生まれた
岡崎さんがオーナー杜氏として岡崎酒造を引き継いだ時、製造石数は150石。
「(経営が)底の底の時代だった」と岡崎さんは言います。
ご主人も共に岡崎酒造に入る予定でしたが、経営が大変な時期だったため、
当時は岡崎酒造に入らず別の仕事をされていたそうです。
ご主人が入社をしたのは今から6年前。
ご主人が入社し、副杜氏として一緒に働くことによりメリットが生まれました。
24時間、一緒に仕事をしていることで悩み事を共有し解決策を導けるのが、
何よりも大きいメリットだと岡崎さんは感じているようです。
また、岡崎さんは先代の杜氏のやり方を忠実にやってきたのに対して、
ご主人は新しい情報を外から仕入れてきて、岡崎さんに伝えてくれるのも
良い点だと話してくださいました。
時代に合った味を求めることにより石数が伸びた
現在、徐々に石数を伸ばしているのは、時代に合った味の日本酒を造っているからだと
岡崎さんは言います。
日本酒がつまみを肴に何杯も飲むという飲み方から、食事と共に1、2杯飲むという飲み方に
変わったのに合わせて、味を変化させていったそうです。
今は「1杯、2杯という少ない量をいかに美味しく飲めるか」を追求し、料理に負けない、
香りの華やかなお酒を主流に作られているとのことでした。
岡崎酒造のこだわりのお酒、品質の良いお酒を次世代にもきちんと繋いでいけるように
作っていきたいと今後の想いも語ってくれました。
自分にしか出来ないこととそうでないことの区別をつける
3人お子さんの母でもある岡崎さん。
忙しい公私をどのような意識で過ごしているのかについて伺いました。
家と仕事場が同じ場所にあるため、オンとオフの境がはっきりせず大変な時もある、と
岡崎さん。
一方で経理の仕事をしながら、子育てをするという「ながら作業」が出来たり、子どもが
自分や大人の仕事を間近で見て育ってくれるという良い点もあると、話してくださいました。
お子さんが幼い時は大変だった時も多く、自分でなくても良いことと自分がやらなくてはいけない
ことの区別をつけるようにしていたそうです。
また、いっぱいいっぱいにならないように、助けは常に求めていたと当時を振り返ってくれました。
置かれた場所で咲きなさい
岡崎さんに座右の銘を伺ったところ、ベストセラーになった渡辺和子さんの著書の
タイトルである「置かれた場所で咲きなさい」という言葉を答えてくれました。
自分でやると決めたからには迷うことなく、この道で花を咲かせたいと優しく
真っ直ぐな目で語ってくださいました。
イベントの後半は参加者の方からの質問に答えていただいたり、交流する時間を
設けさせていただきました。
次世代のために、補助金を活用した設備投資も
「現在の売り上げは?」「赤字にならないために気をつけていることは?」
という質問が参加者の方から上がりました。
売り上げは現在、年間で1億円あるとのこと。
ですが、お酒造りにはまず大量のお米の仕入れが必要なため、資金繰りが大変だと岡崎さんは言います。
酒蔵は300石超えても「小さな蔵」、500石を超えてようやく良い景色が見えると言われているそうです。
岡崎酒造は100石。経営的には「まだまだです」と岡崎さん。
補助金を活用しているかという質問もありました。
現在は次の世代に良い形で酒蔵を渡したい、美味しいお酒造りを作りたい、という想いがあると岡崎さん。
そのために積極的に設備投資も行っているそうで、2年前に設備投資に活用するための
「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」で交付を受けられたそうです。
育児の時間は決して遠回りではない
母でもある岡崎さんに対して質問や交流時にも「妊娠・育児」について話題があがりました。
後継ぎという将来の道が決まっているなか、岡崎さんは「結婚も子育てもしたい」という思いを持っていたそうです。
実際に結婚、子育てもして、大変な時期があったり、足踏みをしているように感じてしまう時期も
あったようですが、それらを経験して振り返ってみると、どれも遠回りな時間だったことはなく、
必要なことだったと話してくださいました。
母でもあり、経営者でもあり、職人でもあるという多面な顔を持つ岡崎さん。
オーナー杜氏としての日本酒に対する熱い想い、そして母としての苦労も赤裸々に
語ってくださり、参加者の方たちからも「期待以上に良かった」「参考になった」と
ご好評の声をいただきました。
ご参加くださいました皆様、ゲストの岡崎さん、大変ありがとうございました。
(野々村奈緒美)
★次回のお知らせ★
『起業家×地域の宝探し 〜つけめん編〜』
ゲスト:ぶしもりや めんめん 店主 青木 まゆみ氏
ファシリテーター:一般財団法人浅間リサーチエクステンションセンター(AREC) 専務理事 岡田 基幸
日時:2017年9月7日(木)14:00〜16:00
会場:松尾町フードサロン
参加費:会場でドリンク1杯をご注文ください。
【青木 まゆみさんプロフィール】
上田市中之条のつけめん専門店「ぶしもりや めんめん」店主。
東京や県内で調理師、ウェディングプランナーとして働くも「40歳までに、なにか自分で商売を始めよう」と決意。
起業や経営について学びながら、県内飲食店のポータルサイト営業に転職。
数え切れないほどの飲食店を食べ歩き、なかでもラーメンの奥深さ、人を元気にする力に強く惹かれる。
経営の勉強や食べ歩きで培った人脈のサポートを受けながら、“女性が一人でも食べに来られるラーメン屋”をコンセプトに
2010年「ぶしもりや めんめん」を開店。
常にお客様、働く人、経営者の三方が“満腹笑顔”になれる経営を目指し、日々学びと実践を重ねている。
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