<テーマ>
【事業に必要な経理と確定申告の基礎知識】
<講師>
講師:臼井 美紀さん(プチ起業、起業初心者さんの経理サポート)
<日程>
2023年6月23日(金)9:30~12:30
今年も上田市創業支援プラットフォーム恒例の「女性のための創業スクール」を
+519worklodge(上田市技術研修センター)にて開催しました。
今年の講座は全4日間の日程。
全回受講いただくことで、創業に必要な「経営」「人材育成」
「財務」「販路開拓」の4つのカテゴリについての知識を
得ることができます。
講師には過去のセミナーで好評だったみなさまをお迎えし、
受講者目線のわかりやすい講義をしていただきました。
第3回のテーマは“事業に必要な経理と確定申告の基礎知識”。
〔講義の概要〕
-講師自己紹介
-私って確定申告しないといけないの?
-開業届って出さないといけないの?
-白色と青色の違いって何?
-どんなものが経費(支出)になるの?と電子帳簿保存法
-売上金(収入)の管理はどうしたらいい?
-領収書類の整理術と保存法
-開業準備から確定申告までの流れ
講師は、臼井 美紀さん。
千曲市の自宅を拠点に、オンライン(zoom)も使った講座や個別サポートで、
日本全国のひとり起業・フリーランスの方のサポートをされていらしゃいます。
お客様からは、「同じ女性個人事業主としての目線から説明してくれるので、
わかりやすい!」と大変ご好評をいただいているそうです。
〔1.はじめに・自己紹介〕
会場10名、オンライン3名、の方にご参加いただきました。
〔2.私って確定申告しないといけないの?〕
基本的に金額の大小にかかわらず収入を得たら
「確定申告」はするものだが、「確定申告の必要がない人もいる」との事。
利益(所得)が48万円以下の人は、
課税所得が0円(所得(利益)-基礎控除48万円=課税所得)のため、
確定申告しなくてもいいが、確定申告するメリットもあるので、
ご自身の状況に合わせてする・しないの判断をしてほしいとのこと。
また、確定申告不要であっても、住民税の確定申告が
必要な場合があるので注意が必要との話も。
なぜなら、住民税の基礎控除は38~45万円(市区町村によって異なる)のため、
利益(所得)がそれ以上ある場合は、住民税がかかるため
住民税の確定申告は必要になります。
ただし、確定申告(国税)を税務署に提出すると、市区町村にデータが届くため住民税の(地方税)の申告は不要となります。
また、副業の場合は、副業の利益が20万以下であれば
確定申告しなくても良いことになっているが、
住民税の確定申告はしないといけない可能性が高いため注意が必要。
また副業の場合の事業所得と雑所得の判断基準が
2022年10月に改正されたため、副業の収入金額によっては、
事業所得にできない(白or青色申告できず雑所得で申告する)ため
注意が必要とのこと。
収入金額がクリアしていたとしても、規定の帳簿作成がされていないと
青色申告として認められないので注意が必要とのことでした。
〔3.開業届って出さないといけないの?〕
開業届を出さなくても罰せられることはないが、税金を払う必要のある収入(利益)がある
場合は確定申告が必要との事。
つまり、確定申告をして税金を納めれば開業届を出さなくても
問題はないと説明いただきました。
開業届の提出は、基本的には「事業を始めた事実があった日から
1か月以内」となっていますが、
開業届を出すメリット・デメリットについて考えた上で、
自分にとって1番良いタイミングで開業日を決めて提出すると良いとの事。
メリット…
① 青色申告承認申請書が提出できるため青色申告ができる
② 保育園への就労証明書を自分で出せる
③ 屋号で銀行口座を作れる
④ 開業日前の費用を【開業費】として経費にできる。
デメリット…
① 夫の扶養から外れなければならない場合が稀にある
② 失業保険が受けられない場合がある。(その人の状況によるため職安のスタッフに相談をすること。)
〔4.白色と青色の違いって何?〕
雑所得・白色・青色申告3種の違いについてです。
①雑所得は帳簿作成の義務がないため一番簡単との事。
しかしいくら帳簿作成の義務はないと言っても、
税務署の監査が入った場合のために、収入と経費の証明が提出出来るように
領収書等は7年間保存しておくことは必要とのこと。
②白色申告は帳簿作成の義務があるのに、
雑所得と同じ基礎控除の48万円の控除しかないため、
メリットはほとんどないとの事でした。
③青色申告は、特別控除10万・55万・65万円ができる。
事業の赤字があった場合は損失申告しておくと、
その赤字を3年間繰り越すことができる。
固定資産では少額減価償却資産の特例を適用することができる等の
メリットがあるとの事でした。
ただし、帳簿は白色申告は「単式簿記(自己流のもの)」でも問題はないが、
青色申告は税務署既定の帳簿作成が必要で
「単式簿記(10万円控除)の帳簿」か
「複式簿記(55・65万円控除)仕訳帳と総勘定元帳の
帳簿が必須」と説明いただきました。
複式簿記の帳簿は、手書きで作成するのはとても困難なため
「会計ソフト」を利用することがおススメとのこと。
日々の入力のやり方さえ覚えてしまえば、
帳簿だけでなく確定申告に必要な書類(決算書・確定申告書b、損失申告用)
作成が自動で仕上がるのでとても便利とのこと。
また、帳簿入力も銀行口座と連結することで
データを取り込むこともできるので、
入力の手間もかなりはぶけるメリットも!
ただしデメリットとしては
① 初期設定が難しい
② ソフトの使い方と複式簿記の入力のやり方を覚えなければいけない
③ 会計ソフト導入前の銀行明細の自動取り込みが出来ないことがある
等々から、事業の収支が発生し始めたら早めに導入して
使い方をマスターするのが良いとのことで、
確定申告時期の2月からでは間に合わなくなってしまうので、
遅くも10月までには使い方などをマスターしましょうとのお話でした。
〔5. どんなものが経費(支出)になるの?と電子帳簿保存法〕
経費に出来るかどうかの判断基準は
① 事業に関連するもの
② 証明できる証拠
③ 常識・良識
の範囲内の3点とのお話でした。
①の事業に関連するものについては、個人事業主が主に使う
勘定科目一覧表を用いて内容を説明していただきました。
(「仕入」「消耗品費」「広告宣伝費」等。)
②の証明できる証拠というのは、証憑書類(取引の証拠)といい、
主に領収書やレシートのことを示しますが、
振込支払いやクレジット支払いのように領収書やレシートが
ない場合の支払いは、請求書や納品書等の支払いの内容が
わかる書類が必要とのことでした。
電子帳簿保存法とは、税務署が決めた保存法に基づいた
データ電子保存のこと。
改正前は、紙保存だったのが、改正後は 紙でもらったレシートや
領収書は紙保存でいいが、メール等データでもらった書類は
紙保存はダメで、PDF形式で電子保存しないといけないとのことでした。
〔6. 売上金(収入)の管理はどうしたらいい?〕
現金でもらった場合…2枚複写の領収書で複写の控えを保管。
または、現金で受け取った時のみの「売上帳」を作成して管理する。
銀行振込でもらった場合…銀行の振込明細と請求書控えを保管。
プラットホーム等の売上金の場合…売上明細書と銀行の振込明細を保管。
プラットホームで実際に売り上げが上がった日が
売り上げの計上日となる為、確定申告の際は売掛金としての
処理になるので注意が必要との事。
〔7. 領収書類の整理術と保存法〕
事業に必要な経費だということが客観的にわからない
領収書には、「領収書の裏書」といって、
事業に必要だったことが客観的にもわかるように
記載しておいた方がいいとの事。
例えば飲食代のレシートは、プライベートの支出ではないか?と
疑いがかかりやすいため領収書の裏に「〇〇様と〇〇の打ち合わせの為」など
補足説明を記載しておいた方が良いとのこと。
他、基本的に領収書のない場合は経費にできないが、
ご祝儀等どうしても領収書のもらえないような経費に限り
「出金伝票」を使えば経費にでき、その場合の記載方法の説明もありました。
領収書類の整理方法は、「金種別に分けて」整理するのが
一番良いと教えていただきました。
現金、事業専用の銀行口座、事業専用のカード会社、
私用の銀行口座やクレジットカード、というように
金種別に仕分けして整理をしておくと、
会計ソフトへの入力がスムーズにできるとのこと。
また基本7年間保管が必要と説明いただきました。
〔8. 開業準備から確定申告までの流れ〕
開業の準備にかかった費用の領収書類も経費になるので
取っておきましょうとのこと。
そして、自分にとって一番メリットが高い日を開業日にして、
開業届と青色申告承認申請書を一緒に提出する。
あとは、会計ソフトと連携のできる
事業用銀行口座(デビットカード付だと尚良い)と
クレジットカード(デビットカードを使う場合は必要なし)を作り、
会計ソフトと連携の設定さえしておけば、
月に1度程度のスタンスで取り込み処理をするだけで、
毎月の帳簿が簡単に仕上がるため、確定申告までの作業が
楽になると教えていただきました。
また、毎年10月に仮締し、1年間所得の概算を出すことの
重要性についても説明いただきました。
今回は臼井美紀さんのHPで開催しているオンラインセミナー
全5回分のうち、第1・2回分を凝縮して約2時間半で講義をしていただきました。
開業から確定申告の流れ、白色申告・青色申告の申請方法、
会計ソフトの導入の利点など、多岐にわたり教えていただきました。
「女性のための創業スクール」第3回のレポートをお届けしました。
次回の講師は村上かおりさんで、【商品を知ってもらうためのネット活用術】です。
お楽しみに!
上田市創業支援プラットフォーム/
一般財団法人浅間リサーチエクステンションセンター(AREC)
小林真梨子