<テーマ>
チャレンジマーケットに向けた出店の準備をしてみよう
<講師>
NPO法人 bond place 理事
深島 孝仁さん
<日程>
2018年11月15日
10月からスタートした「女性のための創業スクール第3弾・平日コース」。本
講座は、創業や事業運営で生じる課題に対して「自分で気付き、自ら行動する
クセをつける」ことを目標に、実践的なカリキュラムが盛り込まれています。
創業の基礎知識を得る座学に加え、「PDCA(計画・実行・評価・改善)サイク
ル」という手法を軸に、受講生がそれぞれ抱える課題を掘り起こし、答えを
見つけるワークも行います。
最終回は、11月下旬に予定されている上田商工会議所のイベント「チャレン
ジマーケット」に、受講生が商品・サービスを提供する模擬店を出すという
想定で、準備に必要な話し合いの“方法”を学びます。
会議や打ち合わせなどの話し合いは、誰かと一緒に物事を進めるときに欠か
せないもの。建設的で実りある話し合いができる場の作り方、考え方は、ビ
ジネスにも大きく役立つそう。講師は、山梨県甲府市で活動するNPO法人
bond placeの深島 孝仁さんです。
[講義の概要]
1.チェックイン
2.いい会議、悪い会議
3.会議を円滑に進める、ファシリテーターの役割
4.チェックアウト
[1.チェックイン]
前回同様、受講前と受講後の自分の変化や学びの結果を確認するため、講義
前に「チェックイン」を実施しました。今回が最後の講義ということもあり、
受講生は改めて「スクールに参加したきっかけ」や、「講座で学びたいこと」
を発表し、全員で共有しました。
[2.いい会議、悪い会議]
「物事の良い結果を得るためには、それに携わるメンバーの関係性が重要で
す」と深島さん。
これはマサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱した「組織の
成功循環モデル」という考え方で、いい結果を生み出すのは下記のように
「関係・思考・行動・結果」の好循環なのだそう。
1メンバーがお互いを尊重し、一緒に考える(関係の質を上げる)
2その考えに気づきや面白さがある(思考の質を上げる)
3自分で考え、自発的に行動する(行動の質を上げる)
4成果が得られる(結果の質が上がる)
5メンバー同士の信頼関係が高まる(関係の質がさらに上がる)
一見遠回りに見えますが、まずはチームの関係を質のいいものにしなければ、
目指す結果は得られないということ。話し合いが「お互いの意見や立場を尊
重しながら、全員で一緒に考える」場になれば、メンバーの関係や思考、行
動を向上させてくれるのです。
「これまでに参加したことのある“イヤだった会議”を思い出してみてくださ
い。自分の意見を否定されたり、発言する人としない人が固定化していたり、
長々と話しても結論が出なかったり。それはメンバーの関係を良くする会議
ではありませんよね。関係の質を高める“いい会議”は、イヤだった会議の逆
のことをすればいいんです」と深島さん。
では、“いい会議”を行うには何が必要なのでしょうか。
[3.会議を円滑に進める、ファシリテーターの役割]
深島さんは「いい会議には“ファシリテーター”の存在が欠かせません」と話
します。会議でのファシリテーターは、会議のセッティングや議事進行を担
当しますが、話し合いや意思決定そのものには参加せず、中立的な立場で意
見が出るのを促したり、調整する役割を担います。
「ファシリテーターに大切なのは、会議を仕切ることでなく“おもてなしの心”
なんです。誰もが安心して意見を言えたり、聞いたりできる場を守るのが仕事。
お互いの関係の質を高めるのに欠かせない役割です」と深島さん。
講義では、ファシリテーターの立場から見た会議の進め方が紹介されました。
ファシリテーターを任された人は会議の前に、どのくらいの時間で、何から
話し合い、決めていくか。どの段階まで話し合いが進んだら終わりにするか
など、その会議の目的やゴール(結論とは違うもの)を準備しておきます。机
や椅子の配置を意識して、参加者が活発に意見を交わしやすくなる環境を整
えるのも大切だそう。
会議本番では、準備していた「ファシリテーターの目指すゴール」と、「誰
かの意見を否定するのでなく、肯定し、さらに増幅させる(その意見いいね、
それなら、もっと○○も加えてみたらいいんじゃない?)スタンスで発言する」
というルールを、参加者全員に共有してもらいます。そこから話し合いを展
開することで、前向きな発言が活発に出る場を作りやすいのだそう。
話し合いの最中、ファシリテーターは、出てきた意見にあいまいなものがあっ
たら“具体的にはどんなこと?”と掘り下げたり、発言の内容を付せんに書いて
可視化したりと、参加者の思考のサポートをします。意見が出揃ったところ
で、最初に共有した目的にかなう方向への収束を促進。ここで大切なのは、
ファシリテーターが無理やり結論を出そうと誘導しないことだそう。
その会議で目指していたゴールに到達したら、その内容や次回の話し合いま
でに各自が行うことを共有し、散会とします。
「ファシリテーターが最初からうまくできる人はいません。回数を重ねるご
とに建設的な話し合いの場を作れるようになります」と深島さん。このあと、
受講生は「チャレンジマーケット出店について30分会議をする」というグルー
プワークに挑戦。参加者とファシリテーターの役割を決め、それぞれが試行
錯誤しながら“いい会議”を体験しました。
[4.チェックアウト]
講義の最後に、受講生の皆さんはこれまでの学びを振り返る「K・P・T」ワー
クに取り組みました。
「K・P・T」では、ある物事に対して下記の3つの視点から振り返ります。
K(Keep:やってみて良かったこと、これからも続けたいこと)
P(Problem:やってみて見つけた課題)
T(Try:次回に工夫・改善が必要なこと)
「K・P・Tでの振り返りは、反省会とは違います。やってみて良かった、次
はこうしたいというポジティブな気持ちで考えましょう。会議は筋トレと一
緒で、繰り返すことが大切です」と深島さん。
講義後のチェックアウトで、受講生はそれぞれの学びの「K・P・T」を発表
し、共有。「いろいろな意見を聞き合うことで、世界が広がった」「これま
で頭で考えてモヤモヤしていただけだったが、学びを得ることで前進できて
いる気がする」など、さまざまな感想が出されました。
「女性のための創業スクール第3弾・平日コース」第6回のレポートをお届け
しました。
次回は本講座の受講生と、これまでの創業スクール修了生がイベントで実際
の販売を体験する番外編「チャレンジマーケット 参加レポート」です。
どうぞお楽しみに!
(office晴文堂 山本里つ子)