上田市創業支援プラットフォーム

【第2回】起業家ネットワークセミナー(2018年度)

レポート2018.11.08

先輩起業家の創業時の経験や経営者としての心構えなどを、トークライブ形式で紹介する

起業家ネットワークセミナー」。
今年度における第2回のゲストは株式会社唐沢農機サービス 代表取締役社長の唐澤健之さん

です。

 

ゲスト:唐澤健之さん (株式会社唐沢農機サービス 代表取締役社長)
ファシリテーター:一般財団法人浅間リサーチエクステンションセンター(AREC) 専務理事 岡田基幸

 

開催日時:2018年10月3日(水)18:30~20:00
開催場所:松尾町フードサロン

 

唐澤健之さん (株式会社唐沢農機サービス 代表取締役社長)の経歴と一言

低迷を続ける農業を新3Kにしたい!
基本は農機具の販売・整備・修理・再生だが、他の企業のWeb関係におけるコンサルティ

ングをするインターネット事業と、農産物を栽培・販売する農業事業も行っています。農

機具屋の二代目ではあるが、後を継いだのではなく、新しいカタチの農機具屋を起業した

ので、二代目企業ではなく二代目起業だと思っています。子どもの頃は農機具屋がカッコ

悪くて、継ぐ気はありませんでしたが、先代に「廃業したら既存の顧客が困る」と相談さ

れて、顧客のために継ぐことを決心しました。会社経営に関しては無知でしたが、セミナー

に通うなどして多くのことをインプットしてきました。ITもマーケティングも独学ではあ

りますが学んで、農機具屋に取り入れています。農機具・IT・農業の3つを善循環させるエ

コシステムを具現化して、低迷を続ける農業を新3K(金になる・快適・カッコいい)にした

いと考えています。

 

 

イベント前半はゲストである唐澤さんとファシリテーターの岡田による対談形式でトークを
展開しました。

 

 

〔目次〕
1.事業のコンセプトは“カッコイイ!を作る農業”
2.転機は父、実弟との話し合いー”高級車が乗れるくらい大きな会社にしよう”
3.優秀な人の雇用は他の優秀な人材が集まるきっかけになる
4.商品を売るよりもその商品で何が出来るかを“売り”にする

 

 

1.事業のコンセプトは“カッコイイ!を作る農業”

 

−−はじめに、唐澤さんの事業紹介をお願いいたします。20181003-0020
会社名は「株式会社唐沢農機サービス」と言います。東御市にて事業を行なっている“農

機具屋(農機具販売店)”です。 農機の販売や修理、再生を主要事業として行っています。

株式会社唐沢農機サービスは、3本の柱で展開をしています。
1つめは、主要事業である農機の販売や修理、再生。

2つめはインターネット事業部である「ビーズクリエイト」。ウェブコンサルティング業

務やマーケティング支援を行なっています。また、全国の農機具販売店と農家をネット

ワークで繋ぐマッチングサービスの「ノウキナビ」、農家が作った農産物をショッピン

グサイトで販売するECサイト「農家直売どっとこむ」の制作・運営を行っています。
3つめは、農業事業部の「カラサワファーム」。昨年2017年7月に新たな事業部として設

立しました。こちらでは現在、信州大学農学部が研究開発した「信大BS8-9」という新

品種のイチゴの生産を信州大学農学部と共に取り組んでいます。今後は農家に向けた新

しい仕組みを提供していく実験場として展開していく予定です。
これら3つを柱にして、「農業×IT=カッコイイ!を作る農業」をコンセプトに事業を

行っています。

 

−−唐澤さんは「株式会社唐沢農機サービス」を継いだ形となりますが、2代目として引

継いだきっかけについて教えてください。

前職では外資系のベンチャー企業に勤めていました。具体的なビジョンはなかったので

すが、26歳で独立すると決めていて、仕事を辞めて実家のある東御市に帰ってきました。

帰ってきたものの、今後が明確ではなかったので、まず収入を得るために当時は農機具

の修理をメインで行っていた父の会社を手伝い始めたのがきっかけでした。

 

 

2.転機は父、実弟との話し合いー”高級車が乗れるくらい大きな会社にしよう”

 

−−現在の事業展開への変革についてお伺いしたいです。

父の会社を手伝い始めた当初、5歳下の実弟も一緒に経営に参加することになりました。

3人で今後について話し合う機会があり、「ご飯を食べていけるだけの仕事をするか?

高級車に乗れるくらいの会社にするか?」という話になったことを今でも鮮明に覚えて

います。父は「好きにやってかまわない」と、僕たち兄弟に今後の方針を委ねてくれた

ので、やるなら大きい会社にしようと2人で決めました。これが分岐点だったと言えます。

 

−−経営についてどのような勉強をされましたか?

経営の勉強は…していないです。
これから起業をしたいと考えている人にオススメをしたいのが「仲間を増やす」という

ことです。例えば税務については税理士に相談するように、自分が理解できていない分

野にも、それぞれ専門家は存在します。自分が分からないことがあれば、仲間のプロ

フェッショナルな人に相談が出来るように仲間を増やすのは、とても大切なことです。

 

−−資金の苦労はありましたか?20181003-0041

会社を大きくしようと決めてからは資金の苦労はありました。自分たちの給料が雀の涙ほ

どな時もありました。初めて資金調達を行う際はお金の失敗や不安が大きいと思います。

僕も初めて銀行から100万円を借りた時は、とても悩みました。いま、当時を振り返る

と「なんであんなに悩んだのだろう?」と思います。

「お金を返さないといけない」と考えるのではなく、「この100万を1,000万円に増やす

にはどうすれば良いのか?」借りたお金を育てることに頭を使うことが大切です。
また、資金調達について銀行の担当者と話を進めていくと、お金の知識が深まるのは良

い点だと思います。そうは言いましても、あくまでもお金を「借りる」立場ではあるの

で、自分でもお金について勉強をしていくことは怠けてはいけません。

 

 

3.優秀な人の雇用は他の優秀な人材が集まるきっかけになる

−−現在、従業員は現在15名いらっしゃるとのことですが、雇用についてお伺いさせてく

さい。

僕は、投資しがいのある若者や自分より優秀な人材を雇用しています。すべてに於いて

優秀な人材を見つけるのは難しいですが、デザインやシステム開発、営業など、いずれ

かが優れているー将棋に例えると飛車角金銀を揃えるーそのように考えて雇用を行って

います。社長が一番優れている企業もありますが、その場合、社長の成長が企業の成長

になってしまいます。優秀な人材を雇用することで、企業が社長の成長を越えて成長し

ます。
また、優秀な人の雇用は他の優秀な人材が集まるきっかけにもなります。優秀な人と仕

事をしたいと思う人は自身も優秀になりたいという気持ちを抱いているので、成長をす

る素質を持っています。優秀だということも大切ですが、お互いにこの人と一緒に仕事

をしたいかどうか?という点も重要視しています。

 

−−従業員との関わり方、企業のリーダーとして心掛けていることはありますか?

まず、無下にしないということを心掛けています。「楽しく仕事ができるためには、ど

うするべきなのか?」を常に考えています。経営判断としてスタッフに伝えなければい

けないという場面もありますが、スタッフのやる気やモチベーションを下げる言動はし

ないように意識しています。

企業のリーダーとしては、なんのために仕事をしているのか、目標を見失わないように

心掛けています。僕もスタッフも目標があるからこそ、頑張れるのだと思います。「も

う頑張れない!」と弱音を吐きたくなることが僕にもありますが、長く引きずらず次の

日には気持ちを切り替えるようにしています。

 

 

4.商品を売るよりもその商品で何が出来るかを“売り”にする

−−株式会社唐沢農機サービスのホームページ内にある唐澤さんのブログ(代表ブログ)

売上げを10倍にできた原動力について書かれていました。そのなかに書いてあった

「【木を見て森も見る】1日という単位で財務を管理しながら、全体を把握したこと」、

ちらについて詳しくお聞かせいただけますか?20181003-0053

同じくらいの規模、従業員が15人ほどの中小企業では、財務管理を社長の奥さんが行っ

ている場合が多いかと思います。株式会社唐沢農機サービスでは15人の従業員のうち

3人、そしてパート1人に財務管理部門で働いてもらっています。創業をすると売上げに

力を入れるために営業職などに力を入れる人が多いと思いますが、僕はまず管理に力を

入れることをおすすめします。管理体制が整っていないところは上手くいかないところ

が多いです。弊社の財務管理部門の3人のうち2人の前職は税理士です。税理士時代に何

十社とみていた2人が今は弊社1社をみてくれているということになります。

 

−−同じくブログに書かれていた 「【農業×IT】アナログ産業の農機具屋に先進的なマー

ティングとITを導入したこと」こちらについても、より詳しくお聞きしたいです。

弊社がIT事業を始めたのは、マーケティングがきっかけです。マーケティングは商品の

魅力を伝えること。どう伝えるかが重要で、商品を売るよりもその商品で何が出来るか

を“売り”にする。“ドリルが欲しいのではなく、穴が欲しい”という言葉を聞いたことが

ある人もいるかもしれません。
「誰のためのの何を課題解決するために僕らはどう伝えられるか?」

どんなに良い商品でも伝えなければ意味がない。伝える手段としてITが必要となります。
農業をしている人たちはインターネットを使っていないと言う人もいますが、10年後に

同じことを言う人はいないと思います。今65歳以上の72パーセントの人たちはスマート

フォンを所有しているそうです。皆さん知らず知らずのうちにITを使っています。農業

とIT、離れていると言われているものを繋げているのが弊社の強みと言えます。

 

 

トーク後、唐澤さんに座右の銘を書いていただきました。
唐澤さんの座右の銘は「夢は叶う」。

「大なり小なり夢は持った方が良いと思います。必ず夢は叶うと思っています。成功者

は夢を持って諦めなかった。諦めなければ夢は叶います。死ぬまで諦めずに夢を持てば

叶うと信じています。」と唐澤さん。会場からは大きな拍手が湧き上がりました。

唐澤さんの事業展開や経営に対する考え方など、これから創業をしたい人たち、すでに

創業している人たちにとって参考になることを具体的に語ってくださったトークとなり

ました。参加者の方たちからは「力強いエネルギーを感じられて、わくわくしました。」

「とてもユニークな経営者で非常に参考になりました。」と大変好評な感想を頂きまし

た。ご参加くださいました皆様、ゲストの唐澤さん、ありがとうございました。また、

レポート内でも一部紹介しましたが、株式会社唐沢農機サービスのホームページには唐

澤さんの仕事の仕方や精神方法、経営方法を紹介している代表ブログがあります。学び

になることが多く書かれています。こちらも是非読んでください。

 

次回の起業家ネットワークセミナーは12月5日(水)開催。
ゲストは竹内正美さん (サポートオフィス アン 代表)です。
どのようなお話をうかがえるのか、楽しみです。

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