先輩起業家の創業時の経験や経営者としての心構えなどを、トークライブ形式で紹介する
「起業家ネットワークセミナー」。ご好評につき、本年度も開催となりました。
第1回のゲストは株式会社ウェルナス 代表取締役(農学博士)の 小山正浩さん です。
ゲスト:小山正浩さん (株式会社ウェルナス 代表取締役(農学博士))
ファシリテーター:一般財団法人浅間リサーチエクステンションセンター(AREC) 専務理事 岡田基幸
開催日時:2018年8月22日(水)18:30~20:00
開催場所:まちなかキャンパスうえだ
■小山正浩さん (株式会社ウェルナス 代表取締役(農学博士))の経歴と一言
2008年から信州大学農学部で新規機能性食品の研究を開始、2013年に博士課程を修了し
農学博士取得後も研究員としてアカデミックな世界で過ごしてきました。その中で、研究
成果で自身の悩みであった高血圧および睡眠障害が改善したことから、同じ悩みを持つ人
へこの成果を届けたいと強く感じ始めました。そのためには、研究室にこもっているので
はなく、起業して自分の想いを直接伝えることが最短ルートと考え、株式会社ウェルナス
を2017年に起業しました。「食で実効的な健康を届ける」ことを夢に日々活動しています。
イベント前半はゲストである小山さんとファシリテーターの岡田による対談形式でトークを
展開しました。
〔目次〕
1.起業のきっかけは、高血圧改善に効く成分「コリンエステル」との出合い
2.同じ悩みを抱えている人たちを助けたいという思いのもと起業
3.機能性食品を売るだけではない会社を目指したい
1.起業のきっかけは、高血圧改善に効く成分「コリンエステル」との出合い
−−はじめに、小山さんのプロフィールを教えてください。
現在32歳、愛媛県出身です。妻と子ども1人の3人家族です。
妻と子どもは妻の実家がある長野県諏訪市で生活、僕自身は平日は営業や企業との打ち合
わせのために東京で過ごし、週末にこちらに戻って家族と過ごす日々を送っています。
子どもの頃から科学者になりたいという思いがあって、その思いを叶えるべく大学の進路も
科学者に繋がる道を選びました。
科学者になるために必要な博士号を取得するために大学院への進学を検討し始めた際に大学
の恩師が紹介してくれたのが、信州大学の中村浩蔵教授でした。
起業した現在もお世話になっている信州大学の中村教授は、高血圧に効果があると言われ
ている漬物をはじめとした発酵食品の研究をされていて、当時、高血圧で悩んでいた僕自
身の体を改善したいという思いもあり進学を決めました。そして、信州大学大学院での研
究をきっかけに株式会社ウェルナスを起業しました。
−−起業のきっかけとなった信州大学での研究についてお聞かせください。
僕は高血圧で悩んでいて、当時は高血圧だけでなく睡眠障害にも悩んでいたのですが、改
善させたいという思いの一方で薬の飲用は避けたく、「特定保健用食品(トクホ)」を飲
んでいました。しかし、トクホの効果が僕の体には表れなかった。
唯一効果があったのが、「コリンエステル」という成分でした。コリンエステルは、2006
年より信州大学農学部で研究をしている機能性(血圧低下)食品成分です。
僕も信州大学大学院にてコリンエステルについてマウスで研究をしていました。研究を進
めていくなかで、自分にも効くのではと思い、摂取をしたら効果が表れました。
自分の体が良くなったコリンエステルの効果をもっと多くの人に知ってほしいという思い
が膨らみ、博士号取得後に起業、現在に至ります。
2.同じ悩みを抱えている人たちを助けたいという思いのもと起業
−−研究者ではなく起業を選んだ経緯について教えてください。
信州大学院在学中は、科学者として研究を続けていくつもりでした。
ですが、自身の体が良くなったコリンエステルの効果を学会の発表だけではなく、一般の
人たちにもっと多く知ってほしい、同じ悩みを抱えている人たちを助けたいという思いが
膨らんでいくなかで「ベンチャー」という存在を知り、自分で伝えたいという思いから起
業という道を選びました。
−−起業をするためにどのようなことを勉強しましたか?
起業をするために起業をしたい人向けのNEDO(ネド・国立研究開発法人新エネルギー・
産業技術総合開発機構)のビジネスプログラムに参加しました。
ビジネスプログラムでは、登記や起業の準備に必要な知識を学び、ビジネスプランの練り
あげなどを体験しました。それまで僕は研究しかやってこなかったので、実際にビジネス
プランを立てて、どのように作り、作ったものをどのように誰に売るのか、それに伴った
利益はどのくらいになるのかなど、起業するにあたってNEDOで学んだことが役に立ち
ました。
また、市場の声を探らないとビジネスに繋がらないという気づきもNEDOで得ました。
−−起業時に不安はありましたか?また、その不安の解消法について教えてください。
起業をした2017年時は子供も生まれたばかりで、売り上げも全くない状況だったので、
「生活していけるのか?」という不安はありました。
営業を行うなかで製薬会社に興味を抱いてもらったり、ベンチャープログラムに参加をし
て優勝を獲得するなどの経験を重ねていくなかで、起業時に抱いていた不安を払拭してい
きました。
株式会社ウェルナスは、信州大学のサポートや研究のバックアップを受けています。この
大学の支援があるというのが営業にも安心感、信頼度に繋がっていて、営業時に門前払い
などではなく、きちんと話を聞いてもらえるという企業としての強みにもなっています。
3.機能性食品を売るだけではない会社を目指したい
−−今後のビジョンについてお聞かせください。
現在はサプリメントの販売に向けて、サンプルの製造を進めたり、投資先を募るためにベ
ンチャーコンテストや企業への営業を進めています。
今後は、ただサプリを売るのではなく個人の健康状態にあわせた提案ができる企業になり
たいです。
今は、個人一人一人の健康状態を調べられる時代です。アプリなどを活用してバイタル
データを取得、個人ごとに最適なヘルスコントロールのシステム提案、販売へ繋げたいと
思っています。
健康といえばウェルナスと言われるくらいになりたいですね。
−−これから起業をしたいと思っている人たちへ先輩起業家としてメッセージをお願いし
ます。
僕自身が起業時に言われた言葉でもあるのですが、起業は想いと覚悟があればできます。
自分の中の想いと覚悟を確認するためにも、先輩起業家の話を聞いてみるのは良いことだ
と思います。
先輩起業家の話を聞いて、自身の考えを整理していくなかで、起業することがベストなのか、
起業をする以外に自分のやりたいことができる道があるのかを探れると思います。
トーク後には今年もゲストの方に座右の銘を書いていただくことにしました。
小山さんの座右の銘は「小さいナスからヘルスケア革命」。
今回のトークで語ってくださった想いがぎゅっと詰まった座右の銘を書いてくださいました。
小山さんの創業の経緯や創業に対する考え方など、これから創業をしたい人たちにとって
参考になることを具体的に語ってくださったトークとなりました。
参加者の方たちからは「聞きやすく、あっという間に終わってしまいました。勉強になり
ました。」「トークに引き込まれてしまいました。」と大変好評な感想を頂きました。
ご参加くださいました皆様、ゲストの小山さん、大変ありがとうございました。
次回の起業家ネットワークセミナーは10月3日(水)開催。
ゲストは唐澤健之さん (株式会社唐沢農機サービス 代表取締役社長)です。
どのようなお話をうかがえるのか、楽しみです。