テーマ:開業届の出し方と、開業に関わる税金
~創業に必要な手続きと税金について学ぼう~
講師:上田税務署 個人課税第一部門 田中美和子さん
日程:平日コース8月9日/週末コース9月2日
女性のための創業スクール3回目の講義は、創業に必要な手続きと税金がテーマ。
講師の田中美和子さんは、ふだんは上田税務署で個人の税相談を担当されています。
「税務署の外でこうした話をする機会は多くない」とのことですが、創業に欠かせない<
手続きと税金について、資料を交え、わかりやすくレクチャーしてくれました。
[講義の概要]
1.なぜ税金を納めるのか
2.開業届とは
3.起業に関わる税金の基礎知識
4.青色申告のメリット
[1.なぜ税金を納めるのか]
私たちは日常さまざまな形で「税金」を払っています。こうした税金は、生活の中であたり
まえに提供される公共サービスで使われています。たとえば警察や消防、救急。道路や信号、
橋などの整備。ゴミの回収や処理。もちろん医療や教育、年金も税金が大きな財源です。
もしも税金がきちんと納付されなければ、こうした公共サービスは維持できません、と田中
さん。なんとなく「負担しているだけ」のイメージがある税金ですが、実は私たちの“あたり
まえの日常”を支えているんですね。
「起業して所得を得たら応分の税金を納める」ことの大切さを学びました。
[2.開業届とは]
どんな業種・業態でも、開業したら「開業届」を管轄(自分の住民票がある自治体)の<
税務署に提出します(開業後1か月以内)。
社会生活の中で得る収入には給与所得、事業所得、不動産所得、配当所得などの種類があり
ます。これらには税金が課せられますが、給与や事業といった“生計を支える所得”には、
税金を軽減する「控除」という特例が多く設けられています。開業届は、起業して得た収入
を事業所得として申告し、控除を受けるために必要な届出なんですね。
開業届を出した事業者には毎年、所得に応じた税金を計算して申告する「確定申告」の書類
が届きます。田中さんによると、記帳(帳簿に収支などを記入する経理作業)や決算のやり方、
確定申告の方法についても税務署で教えてくれるそうです。
[3.起業に関わる税金の基礎知識]
起業して得た収入には、主に4つの税金がかかります。
①所得税
1年間の所得から所得控除を差し引いた「課税所得」に、応分の税率でかかる税。所得が増え
れば所得税もあがります。
②消費税
商品・製品の販売やサービスの提供といった取引に加算される税。消費者が事業者に払い、
事業者が消費者にかわって納付します。
日常生活でもなじみぶかい税金ですが、納税方法はちょっと複雑。課税売上高が1,000万円
を超えたら、超えた年の翌々年に消費税を納めます。申告・納付に関する届出もあるので、
税務署に相談するのがおすすめ。
消費税は平成31年10月に10%に引き上げられ、同時に定められた範囲の飲食料品には軽減
税率制度が適用されることになっています。起業を考える人は、こうした動きにも注意が必要
です。
③住民税(市町村・県民税)
住んでいる自治体に納める税。前年の所得金額によって変動する「所得割」と、所得に
かかわらず定額で課税される「均等割」があり、確定申告で所得税額が決まると、住民税も
自動的に課税額が決まります。
④個人事業税
年間の事業所得が290万円を超えた場合に課される地方税。収入から[必要経費・専従者
給与等・各種控除]を引いた課税所得に、業種ごとに定められた税率(3~5%)をかけて
算出します。
なお個人事業税は、290万円の「事業主控除」と損失の「繰越控除」が認められています。
[4.青色申告のメリット]
事業で得た所得から税額を計算し、納税する確定申告ですが、申告方法は「白色申告」と
「青色申告」の2種類があります。
白色申告は[収入・経費・経費の項目・取引した日・売上先・仕入先]などを簡単な形式
(単式帳簿)で記帳し、確定申告をします。帳簿づけが簡単なので、起業して間もなかっ
たり、所得が少ない人は白色申告が多いようです。税務署に開業届を出しただけなら、
自動的に白色申告の扱いになります。
青色申告は、白色よりも難しい「複式簿記」で記帳しなければなりません。また、青色申告
をしようとする年の3月15日まで(新規開業の場合は開業日から2か月以内)に、「所得
税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
上記のような手間はかかりますが、青色申告には大きく節税できる特典があります。
①青色申告特別控除(10~65万円)がある
②専従者給与を経費として扱える
③事業で生じた損失の繰越し・繰戻しができる
所得金額が大きくなるほど、こうした特典を生かせる青色申告が有利といえます。
事業を運営していく上で、避けては通れない経理業務。田中さんが担当する税相談でも、
苦手だから、控除はよく分からないから、と白色申告を選んでいるけれど、青色申告だっ
たら何十万円も節税できたのに…という人もいるのだそう。
「今は個人事業でも使いやすい会計ソフトがありますし、税務署や税理士会、商工会議所
が開催する学習会も開催されています。ぜひ外部の知識や便利なツールを活用して、
“もったいない!”ということがないように」と田中さん。
起業に向けて考えることが盛りだくさんの受講生ですが、事業で収入を得るだけでなく、
その後の税金にも気を配る重要性を感じた回でした。
次回の講義は
「創業計画書の応用と資金調達 ~融資を受けられる創業計画書の作り方、
創業補助金の知識~」
です。お楽しみに!
(office晴文堂 山本里つ子)