<テーマ>
家計簿から会計のポイントを学ぼう
<講師>
NPO法人 bond place
co+shegoto
芦澤 香さん
<日程>
2018年11月1日
10月からスタートした「女性のための創業スクール第3弾・平日コース」。本
講座は、創業や事業運営で生じる課題に対して「自分で気付き、自ら行動する
クセをつける」ことを目標に、実践的なカリキュラムが盛り込まれています。
創業の基礎知識を得る座学に加え、「PDCA(計画・実行・評価・改善)サイク
ル」という手法を軸に、受講生がそれぞれ抱える課題を掘り起こし、答えを
見つけるワークも行います。
第4回のテーマは「家計簿から会計のポイントを学ぼう」。事業を運営してい
くために避けて通れないのが帳簿つけや資金繰りなどの会計業務です。簿記の
知識がない、数字が苦手…と尻込みしても、家計簿だったらつけている、とい
う女性は多いのではないでしょうか。
講師は、山梨県甲府市でコワーキングスペース運営に携わる芦澤 香さん。家計
簿という“身近なお金のやりくり”から、商品の価格設定や収益構造についての
考え方、起業に必要な収支計画・資金調達の方法について学んでいきます。
[講義の概要]
1.チェックイン
2. 価格の決め方~顧客セグメント、チャネル、収益構造を考える~
3.起業に必要な収支計画と資金調達
4.チェックアウト
[1.チェックイン]
前回同様、受講前と受講後の自分の変化や学びの結果を確認するため、講義前
に「チェックイン」を実施しました。受講生全員で「今気になっていること」
と「今日の講義で学びたいこと」を発表。経理について「苦手意識がある」、
「本を読んでもいまいちわからない」など、不安に思っている受講生が多い様
子でした。
[2. 価格の決め方~顧客セグメント、チャネル、収益構造を考える~]
ビジネスは、自分が提供する商品・サービスの価格が決まっていないとできま
せん。では、価格をどうやって決めたらいいのでしょうか。提供するために必
要な原価や経費、事業を運営していくために必要な利益など、考えられる要素
はいくつもありますが「それだけでは商品・サービスの価格は決められません」
と芦澤さん。お客さんがその商品・サービスから受けとる“価値”が価格と等し
い、または価格以上でないと、その商品・サービスは受け入れられないのだそ
うです。
では商品・サービスの“価値”とは何なのでしょうか?
ここで受講生は、「スターバックスのコーヒーを買う人が求める“価値”を考え
る」というワークにチャレンジ。甘いデザート、種類豊富なドリンク、自分へ
のご褒美感、おしゃれで落ち着ける空間…などの意見があがりました。スター
バックスは、コーヒーという飲み物にこれらの“価値”をつけることで、ブラン
ドとしての独自性を発揮しているんですね。「皆さんが提供する商品・サービ
スにも、このようにさまざまな価値を持たせる必要があります」と芦澤さんは
話します。
続いてのワークでは、「ビジネスモデル・キャンバス」という手法を用いて“自
分の商品・サービスが与える価値”をリストアップ。目標は20~30個ということ
で、受講生は悩みながら自分の商品・サービスについて思考を掘り下げていま
した。
ここまでで考えてきた「自分の商品・サービスの価値」を必要としている人=
あなたのビジネスの顧客です、と芦澤さん。顧客にもいくつかの段階(セグメ
ント)があり、それぞれのセグメントで商品・サービスの種類や価格、PR手段
を変える必要があるそう。この商品・サービスとそれぞれの顧客セグメントが
出会う場(チャネル)を設定することで、それぞれのセグメントにふさわしい“商
品の価格設定”が可能になるといいます。
[3.起業に必要な収支計画と資金調達]
起業を考えた時に、金融機関などで頻出するキーワードが「収支計画」と「資
金調達」です。
芦澤さんによると、この2つは下記のように捉えるとイメージしやすいそう。
・収支計画=事業を続けていくために、いくら利益を上げる必要があるのか?
・資金調達=起業するのにいくらお金が必要なのか?
「家計簿」は家庭のお金の出入りを記録し、将来必要になるお金の見通しを立
てるものです。
収支計画も考えのベースは同じ、と芦澤さん。
事業の収支を家計の費目に例えて考えると、下記のようになります。
・お給料30万円→売り上げ30万円
・お小遣い(お給料の10%)3万円→変動費(売り上げに比例して変わるコスト)3万円
・お給料からお小遣いを差し引いた家計費27万円→粗利27万円(売り上げー変動費)
・お給料に対する家計費の割合90%→粗利益率90%
・家賃、水道光熱費、食費など生活にかかる支出→固定費(売り上げに関係なく
かかるコスト)
・家計費ー生活にかかる支出=貯金→売り上げー(変動費+固定費)=ビジネスで
得た利益
事業では支出を「変動費」と「固定費」に分けて把握することがポイント。商
品・サービスのの価格は、その商品・サービスを提供するのに必要な支出(固定
費+変動費)+ほしい利益から逆算して設定する必要があります。
家計簿の感覚で事業のお金の流れを捉えるならば、
【経営者の手取り額(貯金)+それを稼ぐのに必要なコスト(生活にかかるお金)=
上げるべき売り上げ額(貯金できる手取り収入)】
という考え方ですね。
さらに先ほどの「顧客セグメント」に沿って、利益は薄いけれど売り上げは大
きい商品や、ニーズは限られているけれど客単価が高い、販売コストが少なく
利益率がいい、などの商品を設計し、「トータルで赤字にならない収益構造」
を考えることが大切だと芦澤さんは言います。
「自分の商品・サービスの何が利益を生み、何が赤字のリスクを持っているか
がわかれば、収益構造の見直しや改善がはかれます。資金調達に欠かせない“信
用”を得るには、金融機関やビジネスパートナーに収支計画を提示できることが
大前提ですから、しっかり設計しましょう」。講義ではさらに、資金調達に必
要な「バランスシート」の記入方法なども解説されました。
[4.チェックアウト]
受講生の皆さんが課題と感じていたお金の話。チェックアウトでは「初めて聞
く粗利益という言葉も、家計に置き換えるとイメージが湧いた」、「顧客セグ
メント別に商品と収益構造を設計するというのに驚いた」など、密度の濃い講
義&ワークを経てさまざまな気づきを得られたようでした。
「女性のための創業スクール第3弾・平日コース」第4回のレポートをお届けし
ました。
次回は「営業力をUPさせる! コミュニケーションスキル」です。お楽しみに!
(office晴文堂 山本里つ子)