Introduction先輩起業家紹介
そえるcafe https://www.facebook.com/soeru.cafe/菊地 久美子 さん
そえるcafe
子どもの頃から料理が好きで、仕事にしたいと考える。調理師の専門学校を卒業後に結婚し、出産。その後20年間、3人の子育てをしながら複数の飲食店で働く。障害者の福祉作業所が開く喫茶店の運営を任されて「おもてなし」の大切さに気づき、開業を決意。2016年4月、上田市常磐城の旧丸山邸敷地内に「そえるcafe」を開店。
---カフェを開こうと思ったきっかけは?
私、子どもの頃は勉強も運動も苦手で。唯一得意というか、人に喜んでもらえることが料理やお菓子を作ることだったんです。
料理の道で働きたかったんですが、学校を卒業すると同時に結婚して家庭に入ったので、あちこちの飲食店でパートをするだけでした。
ある時、福祉作業所が運営する喫茶店の切り盛りを任されたんですね。けれど、一生懸命いい商品を作っても、売れない。お客さんが来てくれない。
「どうしてだろう?」と悩んで、長野県が主催する「信州おもてなし未来塾」という講座を受講したんです。そうしたら塾長をされている高野 登さん(元ザ・リッツ・カールトン日本支社長、人とホスピタリティ研究所所長)から、「それはあなたの店から商品を買う理由がないからだ」と言われて。すごくショックだったんですけれど、確かに私は作業所で働く人たちのことばかり考えて、訪れるお客さんの方を向いていなかったなと気付いたんです。例えばお店の中が居心地のいい明るい雰囲気だったり、店内の掃除や花の手入れが行き届いていたり、お客さんを喜んで迎える姿勢があればこそ、そのお店で買い物をしたり、ゆっくり寛ぎたくなる。おいしいものを提供するだけではない「おもてなし」の大切さを学びました。それらを職場で実践すると、だんだん結果が出てきたんです。未来塾で「信州おもてなしマイスター」にも認定していただいて自信がついたので、ずっと夢だった自分のお店を持とうと決めました。
---開業まではどんな準備をしましたか。
準備といっても何から手をつけていいのか全然わからなくて。とりあえず上田市の商工会議所に飛び込んで、起業相談の窓口の人に「私、お店を開きたいんです!」と宣言しました(笑)。窓口の人はびっくりしたと思うんですけど「まあまあ落ち着いて。知識がないなら、まず創業スクールで経営者の勉強をしてみましょう」と勧めてくれたんです。このスクールで学んでいなかったら、今お店は開けていないですね。起業したい仲間との出会いや、県内の経営者の方にも助言をいただいたり、すごく得るものが大きかったです。
創業スクールに通いながら、開業資金を100万円貯めようと働いていたんですが、70万まで貯まったところで今のお店の場所と出あったんです。旧丸山邸の敷地内にある古民家でした。人通りもほとんどないし、隠れ家みたいな場所なので「お客さんが来るわけがない」とほとんどの人に反対されましたが、直感で「ここしかない!」と即決しました。場所を紹介してくれた人のつながりで、私の資金の範囲内で改装してくれる大工さんと知り合えたり、創業スクールのアドバイザーの方が上田信用金庫さんを借入先として紹介してくれて、半年分の運転資金の融資を受けられたりと、人とのご縁やつながりの大切さを感じました。
家族には「上手くいかなかったらどうする、家庭と両立はできないんじゃないか」とすごく心配されたんですけど「絶対に家族に迷惑はかけない」と約束して、準備を重ねました。最後には「ここまで頑張っているなら」と応援してくれるようになりましたね。
---お店のコンセプトを教えてください。
来てくれたお客様の心と体に、優しく寄り添える空間です。店名にもその願いを込めて「そえる」とつけました。私の提供するメニューは家庭料理がベースなので、それを古民家という非日常の空間で、ゆったり楽しんでいただけるように、素材や盛り付けに工夫しています。
キーとなる食材ですが、麹などの発酵食品を多く取り入れています。以前、私が体調を崩した時に姉から「甘酒が体にすごくいいのよ」と勧められて、食事に甘酒や麹を取り入れたら、だんだん体質も変わって元気になれたんです。その経験があったので、食べることで人を元気にする食材や調理法のチョイスを心がけています。
今のところあまり宣伝はしていませんが、来てくれた人やご近所さんがお店のことを口コミで紹介してくださって、新しいお客さんが増える、というサイクルが続いています。つくづく人のご縁のありがたさを感じますね。