Introduction先輩起業家紹介
株式会社ルーツ 三井 健太郎 さん
プログラマー
株式会社ルーツ 代表取締役
上田市出身。プログラマー、株式会社ルーツ 代表取締役。8歳の頃からプログラミングに興味を持ち、国立長野工業高等専門学校で電子情報工学を専攻し、エンジニアとして県内メーカーに就職。アメリカへの出向、現地のITサービス企業への転職を経て帰国し、地元上田で2008年に創業。商社と提携し業務用ソフト開発や企業の技術顧問などを手掛ける。「生涯現役を続けるための働き方」を提案。
---プログラマーになろうと思ったきっかけを教えてください。
小学生の頃はファミコン全盛期で、その頃はゲームクリエイターになるのが夢でした。たまたま親の仕事の関係でその頃はまだ珍しかったパソコンが家にあったので、図書館で借りてきた本を見ながらソースコードをコツコツ入力してましたね。初めてインベーダーゲームが動いた時の感動と、それをプレイした友達が喜んでくれた思い出が今思えば原動力ですね。
その後は順調に高専に入って仲間にも恵まれて「全国プログラミングコンテスト」で優勝(文部大臣賞受賞)して、とまぁトントン拍子ですね。就職か進学かは少し迷ったのですが、情報系は日進月歩の業界ですから大学で教えられている知識は最先端の現場と比べるとどうしても一昔前のものになってしまうので、なるべく早く現場に立って一人前になろうという事でそのまま就職しました。
---起業を決めた理由は?
企業に就職して結果を出せるようになってくると、少し厄介な事が起きました。
自分はプログラミングが好きでずっと現場でこの仕事をやっていたいのですが、組織が大きくなってくると成果を出した人間からマネジメント側に引っ張られて、現場を離れなければならなくなるというジレンマです。
これに関してアメリカ駐在中にとても印象的だった出来事があって、向こうではある会社とCADを共同開発していたんですけど、その会社には社長がちゃんといるんですが実質的なオーナーは開発部長さんなんです。つまり自分の作った会社に雇われ社長を迎えて、自分は好きな開発の仕事に集中したいから開発部長をやっている、というのを知った時は文字通り目から鱗でした。社長すら外から引っ張ってくるのかよと。
管理職になるのを憂鬱に感じていた自分がバカみたいに感じて、「それなら自分にも自分にあった会社が作れるんじゃないか」と思ったのが起業の始まりですね。
---起業の計画段階では、どんなことを大切にしましたか。
事業という意味では「細く長く」ですね。「細く」に関しては自分のキャパ以上の仕事を受けてしまうと体を壊すリスクもありますし、増員して対応しようとすれば品質が保てず不具合の多いものを作ってしまい信用を失います。
「長く」は当然ですが自分が作った物には責任がありますから、こちらの都合で廃業して後は知りませんみたいな事態を避ける為でもあり、また長く事業を行う事で積み上げたノウハウを製品に活かせる仕事だからです。
勿論食うに困る様では話になりませんが、新しい仕事を増やすだけの余裕がある時は、仕事の量を増やすよりも自分の能力を高めて仕事の質を上げていく事に注力しようと思いました。サラリーマン時代は何かと妥協も多かったですが、自分の名前で仕事をする以上、規模は小さくても気が利いていて不具合の少ない、そんな製品を胸を張って世の中に出して行きたいと思っています。
---経営者とプレイヤーの両立は大変では?
経営者としての唯一の仕事は、自分がプログラマーの仕事に集中できる環境を整えることです。自分は営業やカスタマーサポートが得意ではない。なのでそういう方面に長けた人とLLP(有限責任事業組合)を設立して、利益を分け合いながら、それぞれが最大のパフォーマンスを発揮できる仕組みを作りました。そして技術的に革新性があり、経営的に旨味があって、倫理的に正しい案件を選ぶまでが仕事です。
こうしたお膳立てをするのが経営者としての自分なら、その仕事に対して結果を出すのがプレイヤーとしての自分です。基本的に今までに無かったものを作り上げる仕事なので、毎回が試行錯誤の連続ではあります。それでも自分の才能が活かせる環境で勝負しているのですから、大変は大変ですが苦痛ではありません。
---地方で起業することの良さとは。
まずは金銭的なコストが低いことですね。家賃も生活費も、都会よりずっとコストが少なくて済みます。うちみたいな業態だと家賃と自分の生活費だけ稼げれば最低限の経営は成立してしまうので、赤字倒産のリスクはこれだけで激減します。
地方は都会に比べて確かに不便で面倒くさいです。でもそれは見方を変えればそれだけ人間らしい生活があるとも言えます。プログラムにどっぷりのめり込んでしまうと本当に非人間的なライフスタイルになってしまうので、バランスという意味で田舎暮らしの中に身を置く事は、長く現役を続けていく上でとても重要なポイントだと思いますし、それが結果的に健康的でいい仕事を沢山残す事に繋がると思います。